猫の慢性腎臓病。多飲多尿でラプロスとカリナール2を投与。2か月後の結果は…?

猫の慢性腎臓病

久しぶりにスタッフの猫、ニコの登場です。3度の乳腺腫瘍の手術を乗り越え、現在17歳!元気はあるものの、高齢猫の宿命といえる慢性腎臓病になってしまいました。
今回は猫の慢性腎臓病の初期~中期の治療について、スタッフの猫ニコの例を参考にお伝えします。
↓猫の乳腺腫瘍の話題はこちら↓
猫の乳腺腫瘍を振り返って【前編】しこりの発見と、1回目の手術に至るまで
猫の乳腺腫瘍を振り返って【後編】3回目の再発と手術から3年半。全治といえるかも…!

シニア猫の宿命といえる慢性腎臓病

血液中の老廃物のろ過、水分・ミネラルバランスの調節、造血ホルモンの分泌、血圧の調整の機能を果たす腎臓は、動物が生きていくうえで最も重要な臓器の一つです。
この大切な腎臓を弱点とする動物が猫。尿を凝縮してため込む習性や、人間のように塩分の高いフード・おやつのとり過ぎ、糖尿病などが原因では?と言われています。なんと7歳以上の猫の3~4割が腎臓病を患っているのだとか。
腎臓病は血液をろ過して尿をつくるネフロンが徐々に壊れていきます。このネフロンは一度壊れると再生できないため、正常なネフロンに負担がかかり徐々に腎臓機能が低下します。
※猫の腎臓1つに約20万個あるといわれています。
尿で老廃物や毒素を排出できなった猫は、脱水や貧血、嘔吐、食欲低下などの症状を経て次第に弱り、最終的に命を落としてしまうのです。

猫の慢性腎臓病の進行と症状

 stage1stage2stage3stage4
腎臓の機能100-33%33-25%25‐10%10%以下
猫の症状元気多飲多尿食欲低下、元気がない、
毛並みが悪くなる、貧血、嘔吐
検査尿検査や血液検査で異常なし尿比重の低下
蛋白尿が出る
尿素窒素、クレアチニンの高値
体内のミネラルバランスの乱れ

※動物病院でもらった「ねこちゃんと腎臓のおはなし」監修:渡邉俊文先生(麻布大学)より抜粋

猫 慢性腎臓病
ねこちゃんと腎臓のおはなし

症状がでない初期、療法食にトライ。しかし…

ニコは2017年6月の健康診断でBUN(尿素窒素)※1とCre(クレアチニン)※2が正常範囲を超え、腎臓病の初期と診断されていました。その後、療法食やシニア食をいくつか試してみたものの、続けられたのはロイヤルカナン腎臓ケア(パウチ)くらい。といっても毎日ではなく、週2~3回食べてくれればいいほうでした。
※1 BUN…血液中の老廃物や毒素。
※2 クレアチニン…筋肉の運動により出る血液中の老廃物。

同時に吸着剤「ネフガード」も試しました。これは、体内の毒素などを吸着して便で排出するというもの。カーボン(炭)が成分となっているのでウェットフードに混ぜると黒くなります。入れすぎると食べなくなってしまうので、ほんの少しだけ振りかけていました。

腎臓病が進行して多飲多尿に…!

2018年春「前より少し水を飲むようになった?」と思っていたら、夏を過ぎた頃、食欲の低下と同時に多飲多尿が見られるように…。あわててオシッコを持参して尿検査をすると膀胱炎で、尿比重も低下していました。「おそらく腎臓病が悪くなっているけれど、治療は膀胱炎を治してから」と獣医師。
※尿の濃さ。尿の中の老廃物(尿素・塩化ナトリウムなど)の割合。

膀胱炎の薬を1週間投薬。再度の尿検査で改善していたので今度は血液検査を。すると、BUN(尿素窒素)とクレアチニンが基準値をゆうに超えていました…!

 2017年6月2018年4月2018年11月基準参考値
BUN
 45.847.575.2↑17.6~32.8
Cre
2.62.23.4↑0.8~1.8

猫の腎臓病薬「ラプロス」の投薬開始

獣医師によると、「腎臓病のステージが急に上がってしまった。でも、尿にたんぱくが出ていないからひどくはない」とのこと。…とはいえショックでした。食欲が下がるのも当然です。シニア食や療法食を積極的にあげられなかったことが頭をよぎりました。
獣医師と相談した結果、今後の治療にはラプロス(販売:共立製薬)を投与し、療法食やシニア食をもっと取り入れ、サプリメントのカリナール2をすすめられました。
ラプロスとは東レが開発した猫の腎臓病の薬。2017年4月、販売が開始された注目の新薬です。多飲多尿の症状が出るステージから投薬するそうです。

猫 腎臓病 ラプロス
猫の慢性腎臓病の薬「ラプロス」。1回1錠、1日2回投薬。


ラプロスの薬理作用は以下。腎臓の炎症を抑えて血流を促し、ネフロンの線維化へアプローチし、腎機能の低下を抑制するようです。

  1. 血管内皮細胞保護作用
  2. 血管拡張作用
  3. 炎症性サイトカイン産生抑制作用
  4. 抗血小板作用
猫 腎臓病 ラプロス
東レ「ラプロス」資料より。


ウエットフードしか食べないうちの猫には、ラプロスを朝と夜のフードに混ぜて与えました。そのままフードに入れても溶けにくく、味もほとんどしないようです。毎日の投薬が簡単なので、猫にも飼い主にも負担になりません。膀胱炎の薬を飲ませたときとは雲泥の差です。

乳酸菌が主成分のカリナール2

獣医師のアドバイスでラプロスと同時にカリナール2(販売:バイエル薬品)の投与も始めました。カリナール2は乳酸菌などの善玉菌の栄養となる成分と2種類の乳酸菌が入っている粉状のサプリメント。乳酸菌は窒素物を利用して増殖するため、消化器官内の窒素物を整えてくれるそう。ネットなどで購入できます。今思えば、多飲多尿が出る前からカリナール2を飲ませておけばよかったな、と…。


しかしここで問題が…。「無味無臭なのでフードに混ぜても味に影響しない」とあるカリナール2ですが、うちの猫は1口2口で食べるのをやめてしまいました。舐めてみると少しだけヨーグルトのような酸味を感じ…。そこで、試しに飲み水のボウルに溶かしてみたら…飲んでくれました!※その後、飲み水に溶かすのでは足りないので、カリナール2のお団子を作って、ちゅ~ると一緒に食べさせる方法に変えました。
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約2か月後の結果は…?

ラプロスとカリナール2の投与と同時に、フードとおやつを見直しました。フードとおやつの見直しとは、①減塩 ②+食物繊維 ③-タンパク質 の3本柱(次回詳しくお伝えします)です。すると、多飲多尿が少しずつ改善してきました!
約2か月経ったので先日また血液検査をしました。その結果がこちら☟

  2018年11月2019年1月基準参考値
BUN
75.254.7↓17.6~32.8
Cre
 3.42.9↓0.8~1.8

基準値は超えたままですが、BUNとCreどちらの数値も下がりました!食欲には依然としてムラがありますが、ラプロス、カリナール2、見直しフードの三つ巴作戦がいい効果を導きだしているようです。
しかし今回の血液検査では、MCHC(平均赤血球Hb)が29.2という数値で、標準値31~35を下回る結果となってしまいました。これは貧血の症状が出ているということ。獣医師にペットチニックというサプリの追加を提案され、現在取り寄せているところです。
では次回は、ラプロス、カリナール2の投薬と並行して行った「減塩・タンパク制限・+食物繊維」のフードについてお伝えします!
腎臓病の猫と暮らしている飼い主さん、いっしょにがんばりましょう!

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