「猫可賃貸を増やして猫助け」仙台初の猫共生賃貸オーナーが明かす、物件作り・客付け・管理のメリットとデメリットのメインイメージ

全国的に猫と暮らせる賃貸物件は不足しています。ペット不可の賃貸や一般的なペット可賃貸の大家さんのなかには「猫可や猫共生」への改変を考えている方もいらっしゃるのでは?

そこでモフマガは、以前ご登場いただいた仙台市の黒猫大家さんに再びオンライン取材を敢行。猫共生賃貸経営のメリット・デメリットなどお聞きすることができました!

猫と暮らせる賃貸物件を増やす=猫の殺処分を減らすこと!

ここ近年、猫の人気は留まるところを知りません。当ペットホームウェブ「2020年アクセス解析」によると、ペット条件を指定して検索した件数(=PV数)は、小型犬可+中型犬+小型犬可を足した数より猫可が大きく上回っています。

ペット2020アクセス解析_ペット条件別PV数

ペットホームウェブ「2020アクセス解析結果」より。※実数は非公開※ペット条件「未指定」を除外した結果

「ペット可難民ゼロ」を掲げるペットホームウェブとしては、モフマガで猫と暮らしやすい物件をご紹介することでその必要性をアピールしてきました。その1つが合同会社NecoNect代表、黒猫大家さんの猫共生賃貸です。

前回記事「保護猫を迎えると大家さんから支援金!猫殺処分ゼロを目指す仙台市の猫共生賃貸とは?

黒猫大家さんが猫共生賃貸を始めた経緯は、まず猫好きの奥様の影響で猫好きになり「猫の殺処分をなくしたい」思うように。そして二人で迎えた保護猫ジジくんとの暮らしで「猫共生賃貸を増やせば猫の殺処分が減るのでは?」と考え、2016年に猫共生賃貸シャノワール(黒猫)を建築したというもの。今では3棟全23室の猫共生賃貸を管理運営されています。

猫可賃貸 猫共生 オーナー インタビュー

NecoNect代表、黒猫大家さんと愛猫ジジくん

「猫可賃貸のオーナー予備軍に向けて参考になるお話を聞きたい」という当モフマガの呼びかけに応えてくれたのは、「猫の殺処分ゼロのためには、もっと猫可賃貸を増やすべき」という想いに他なりません。

では早速、黒猫大家さんへのインタビューをどうぞ!

猫共生賃貸の物件作り(新築)と一般賃貸との違い

──今回、猫共生賃貸のノウハウを記事にするとライバルが増える可能性があります(笑)。よろしいですか?

はい。前にお話しした通り、猫共生賃貸は猫の殺処分のことを知ってそれをどうにかしたいと始めたことですから。

──前もって「猫共生賃貸オーナー予備軍の方々の像」をお聞きしたら「すでに賃貸物件を何棟か持っている人」ということでしたが。

自分の周りで猫共生に興味をもっているのがそういう方々ですね。今回、賃貸オーナーさん向けということを考えると、じつは猫共生を始めたもうひとつの理由がありました。

──確かそれまで不動産投資をされていて…

経験が浅かったのでまだまだ手探りでした。管理も全部お任せしていましたし、積極的にタッチしていない部分がありました。今後どのように他の物件と差別化していこうかなと考えている時期で、そういうときにたまたま猫の殺処分を知って、「猫助けをしつつ差別化していけるな」と経営的な切り口での差別化を考えました。猫共生賃貸を始めようとしたことが、不動産事業、賃貸業実務へと意識を変化させ、大きな転換期になりましたね。

──新築の猫共生賃貸から手がけたのですね?

はい。その頃、マイホーム新築したり新築の企画物件を1回購入していたので、新築アパートがどういう流れでどういう費用がかかるのかを経験していました。なんとかできそうと踏んで新たなチャレンジをしたわけです。

猫可賃貸 猫共生 オーナー インタビュー

2016年築、仙台初の猫共生賃貸「シャノワール」

──新築で猫共生賃貸を作る場合、一般賃貸との違いは何でしょうか?

違いはそれほど大きくないです。間取り調整、使用する床材や壁紙をペット対応にするなどのちょっとした部材の違い程度で、追加費用はその差額分だけになります。

──猫用の造作などを取り付ける手間とお金がかかりませんか?

大きな人工(にんく)にならないですね。人工だけでいうと新築を建てるなかでは数万円といった話です。施主さんによってなので厳密にそれがいくらといえないけれど、ひと部屋にかかる金額でいったら10万、20万、30万円といったところ。大きなインパクトではありません。

──設計段階で+αの手間や費用は?

私は自分で設計したので手間だけ。建築図面を引けるわけではないので、建築士さんのプランに対してこういう物件こういう間取りでいきましょう、ステップやキャットウォークの猫共生部分は図面作って建設会社にお渡しして、最終的に建築図面に落とし込んでもらいました。

猫可賃貸 猫共生 オーナー インタビュー

黒猫大家さんがデザインした猫設備の図面

猫可賃貸 猫共生 オーナー インタビュー

こちらができ上がり

──シャノワールで工夫したところは?

特徴的なのはキッチンです。私の想いとして猫は誤飲誤食が怖いのでキッチンに入ってほしくない。カウンターキッチンにしたものの確実に分けたい、でも猫の姿が見えたらうれしいな、と内窓を付けました。

猫可賃貸 猫共生 オーナー インタビュー

シャノワールのキッチンと内窓。

猫可賃貸 猫共生 オーナー インタビュー

居室は腰壁を採用。

──これはめずらしいです。居室は腰壁になっていますね。

正直、腰壁じゃなくてもいいんです。実際は上下ともペット対応の壁紙貼っているので。猫は高い所に上るので全面貼らないといけない。建築当時は腰壁にしていると「あ、ペット対応にしているな、考えてくれてるな」というのが割と見えやすかった。だからアピールのひとつとして腰壁にしました。でも、それ以降の物件はもう腰壁はやっていないです。コストがかかりますし。

──床材は?

ペット対応の床材で傷がつきにくく滑りにくいものです。シャノワールはペット対応のクッションフロアを使っていますが、それ以降はフロアタイルにしました。木目調以外のいろんな柄のフロアタイルが出てきましたので。

──ジジくんを飼っていて困ったことを活かした部分はありますか?

先ほどのキッチンです。自宅は普通のカウンターキッチンで猫が入り放題なので、ジジが何度か使ったフライパンの油を舐めちゃったり何か浸けてある水を飲んじゃいました。大きな誤飲事件にはなっていませんが。

リフォームで猫共生にする場合とプロデュース案件

──リフォームで猫共生にする場合はどうでしょうか?

新築と違って、基本的にまるまる費用がかかります。基本的にやることは新築と同じでお部屋に合わせた設備設計をしていきます。費用が抑えられるのは、退去後で壁紙を貼り替える時期ですね。床をリフォームするタイミングでもいいです。となると新築と一緒で、材料の差額分となるので効率よくできます。退去したタイミングで次は猫共生でやってみよう、というのが一番いいかな。

──猫共生ではないアパートをひと部屋単位でリフォームして猫共生に?

そうです。オーナーさんの意向に寄りますが、私の所有物件では、順次、猫共生の仕様にして募集しています。最終的に全部猫共生に入れ替わるのがスタンダード。猫共生リフォームしていないお部屋ではペット不可の契約、猫共生リフォームが終わったお部屋は猫可で賃貸借契約を結んでペット可になります。あくまでお部屋ごとの契約になりますので。

例えばシャノワール歩坂はオーナーチェンジでペット不可物件を購入して空室を順次変えていますが、オーナーチェンジした時点で「このアパートは猫共生になります」と宣言をして、入居者さんにきちんと説明しています。後々クレームにならないようきちんと説明することが大事ですね。

猫可賃貸 猫共生 オーナー インタビュー

リフォームで猫共生にしたシャノワール歩坂

──NecoNectでは依頼を受けて猫共生賃貸のプロデュースもされているそうですね。

はい。necoto®×クラシヲの東北エリアを担当しています。初めて猫共生型賃貸をやる場合は、どういう部材を選んだらいいか、設備はどのように作ったらいいか分からないと思います。一般的な建設会社や工務店さんに「キャットウォークを作って」と言ってもできません。NecoNectの猫共生賃貸プロデュースは、こちらで猫共生部分の設計し図面を出して作り上げていきます。当然、施主さん業者さんとすり合わせていきます。

猫可賃貸 猫共生 オーナー インタビュー

新築プロデュース案件「レ・シャトン」。床から窓、窓から窓の動線が複数ある。

猫可賃貸 猫共生 オーナー インタビュー

行き先が3方向に分かれたステップ。

──やはり猫共生部分は、ある程度、賃貸物件と猫について詳しい人の介入が必要ですね。プロデュース案件のエリアは?

仙台市内が力を発揮しやすいのですが、ちょっと離れたところでは岩手県一関で1物件プロデュースしました。宮城県内の古川でもやらせてもらっています。

──施工業者さんは指定していますか?

いいえ、業者を押し付けることはないです。オーナーさんがリフォームでお願いしている業者さんで問題ありません。うちの物件をお願いしている会社にお願いすると、話が通じやすくなります。あくまでプロデュースという形で、猫共生物件の設計という部分のウエイトが大きくなっています。その他わからないことの相談も受けています。

プロデュース詳細とお問合せ
NecoNectウェブサイト

猫共生賃貸の管理。クレームは5年間一切なし

──管理面で猫共生とその他との違いはどんな部分でしょうか?

ペット可物件全般で鳴き声など音の部分でクレームにつながりやすい、というのがあります。しかし共生型賃貸の場合は、契約段階やオーナーチェンジ段階で「基本的に猫を飼う環境」と示しているのでクレームになりにくい。猫を飼っていない人が入居されても、だいたいが猫好きでみなさん好意的に捉えてくれます。ここがメリットですね。5年間でクレームは一件もありません。

ちょっとしたトラブルは1回だけ。入居者さんの猫が逃げちゃってベランダ伝いにお隣の部屋に入ってしまったのですが、無事に戻り、結局お互い様で平和に解決しました。このときは鉢合わせた猫同士がケンカしてケガしないかなと心配しましたね。

トラブルではありませんが、シャノワールで猫1頭と一緒に入居された方から「仔猫2頭の里親になりたい」と申し出があり、特別に3頭飼育を許可したことがあります。設備的に動線が不足するので市販のキャットタワーを設置しました。入居者さんの相談には柔軟に対応しています。

猫可賃貸 猫共生 オーナー インタビュー

キャットタワー増設時の写真。「先住猫さんが待ちきれずに登り始めてかわいかった」と黒猫大家さん。

──脱走は気を付けなければいけませんね。ところで「賃貸物件で猫」というと、退去時に猫の爪でひどい状態だった…という事態を多くの大家さんが恐れていると思いますが。

あらかじめ予防しているのでひどい状態になったケースはありません。ほとんどクリーニングだけで終わっています。ハード面ではペット対応の壁材、床材を使用した予防部分、ソフト面では入居時の契約書を結んでもらうときに、基本的な飼い方と守ってほしいことをきちんと示しています。

一例としては「きちんと爪とぎを設置してあげてください」であったり。ペット対応の壁紙で予防はしていますが、やっぱり猫は爪とぎする動物なので「爪とぎをさせない」ではなく「きちんと爪とぎさせてあげる」。

──いわゆるペット細則ですね。書面があるのでしょうか?

はい。necoto®のフォーマットを利用しています。

客付けでのメリットは「アピールしやすいこと」

──ペット可は面倒という不動産会社もあるようですが。猫共生賃貸に対する不動産会社、管理会社の対応はどうですか?

仲介さんは「猫飼いたい」という人に紹介できる物件が不足がちという部分で「ありがたい」と話されます。管理会社は業務は同じでトラブルが起こらないから一般賃貸と変わらないという認識です。

猫共生オーナーとしては、仲介さんにアピールしやすいのがメリットとしてあります。一般的なペット不可賃貸で築年が経ってくると、他の物件との差がなくなってきて埋もれてきます。そのなかでうちは「猫を飼いたい人がいたらお願いします」と特徴づけが強いので仲介さんとしてもわかりやすい。「猫飼いたい」というお客さんが来たら「そういえばこの前猫共生にした物件あったな」とわりと繋がりやすいです。

──ここが大きなメリットですね。

はい。そういうお客さんがきたら圧倒的に強い。その反面、猫と暮らす人に絞ってしまうので、そこは当然デメリットとして出てきてしまいます。表裏一体です。

──デメリットはようやく出てきた気がします。他にありますか?

デメリットに関してはきちんとお話しておかないと。もう一つのデメリットは、猫共生賃貸として作ると戻しづらい、戻すのに費用がかかるというのがあります。オーナーとしてきちんと「猫共生をやろう!」としないで踏ん切りがつかないまま中途半端にやると、本来のメリット活かしきれないことになってきます。

猫可賃貸 猫共生 オーナー インタビュー

もう1頭の愛猫アズちゃん。

猫共生に向いている物件は? 入居率は上がる?

──こういう物件は猫共生に向いているなどありますか?例えば立地では…

猫共生は立地を選びませんね。

──駅近でなくて大丈夫ですか?

はい。犬の場合は散歩しやすい立地になりますが、猫は完全室内飼いなので、周りがうるさ過ぎるなど人が住みにくい立地でなければ問題ないと思います。

──入居率はどうでしょう?

「猫共生賃貸にしたから入居率が各段に上がります」とは言えません。あくまで猫共生部分を除いた部分、物件そのものがあまりにも悪かったら入居率は上がりませんね。

ちなみに、新築で建てたシャノワールは完成が1月頭。1月中に1部屋決まって残りの2部屋も2月中に決まりました。ところが2棟目、シャノワール北山は最初が全然決まらなくて。家賃設定を含めて総合的に見誤りました。その後、出だしのミスは取り返すことができて、満室になってからは退去は時々あってもすぐに埋まります。今では持っている物件の中でも一番立地が良くて評価が高い物件です。

──もともと立地がよくてきれいな物件を猫共生にしたほうがいいのは確かですが、それがない物件を猫共生で底上げすることはできますか?

これまであまり手入れをしてこなかった、積極的にリフォームをかけず設備投資もしていない状態の部屋を猫共生にしても、当然、入居率は上がりません。リフォームで最低限やるべきことをやって、部屋そのものの価値を上げれば家賃を戻せます。猫共生だけに頼ってなんとかなると誤解はしてほしくはない。あくまで付加価値でしかないので。

──リフォーム時に猫共生にすれば結果が出やすいのですね?

そうですね。通常のリフォームと併せてのほうが出やすいと思います。家賃を戻せる部分と猫共生部分で、上げ幅を広げる可能性が出てきます。当然、費用の回収は見込めます。私の考え方としては、猫共生部分を一旦置いてもその部屋に住みたいか。ある程度「この部屋だったら住みたい」というベースがあっての猫共生じゃないと、結局は選んでもらえないと思っています。そこだけは勘違いしないでもらいたいですね。

──なるほど。ところで、物件のサイトがありますがご自身で作ったのですか?

はい。こういうことが得意だったので。猫共生はウェブサイトを作ったほうがアピールしやすいです。ペット不可の物件で作っても効果はほぼないんじゃないかなと思いますが。実際、問合せも時々ありますし、入居につながったケースも何件かあります。

あとSNSなどの活用も当初からやっています。私がプロデュースさせてもらった物件は、SNSでPRのお手伝いもしています。猫共生やり始めた当時から、仲介さんにすべて丸投げして済むとは考えてませんので。

──猫共生賃貸も物件サイトもお好きだからこそ手間をかけられるのですね。今回は貴重なお話をありがとうございました。

猫可賃貸 猫共生 オーナー インタビュー

物件サイトの更新作業をしていると…

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この記事を書いた人

ペットホームウェブ編集部 中根
ペットホームウェブ編集部 中根 さん

友人宅で生まれたキジトラの♀猫を生後2か月で養子に迎えてから早17年。猫の飼育では、避妊手術の時期の遅れから乳腺腫瘍を発症させてしまったことを海より深く反省。犬の飼育では、実家の3代目の犬が子犬だった頃に「ワッ!」と驚かせて嫌われてしまったのを後悔している。趣味は映画鑑賞ときどきライブ。

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